測定事例:プラモデル用水性塗料とポリスチレン板の密着強度

概要

プラモデル用水性塗料とプラモデル用ポリスチレン板(PS板)との密着強度について、LUMiFracでの測定を行いました。

水性塗料の濃度の違いで密着強度にどのような傾向があるか、塗料の粘度・接触角の測定も併せて行い、複合的に評価しました。また、PS板側の表面処理有り・無しでの影響も検討しました。

 

測定対象

塗料:プラモデル用水性塗料

塗料と水で4水準の濃度になるよう調整しました。

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基材:プラモデル用ポリスチレン板(厚さ1.2mm)

ポリスチレン板を短冊状にカットし、中性洗剤で洗浄後、超音波バスで5分間処理した。 洗浄後、乾燥器を用いて40℃・24時間の条件で乾燥を実施した。 乾燥後、UVオゾン処理装置で表面処理した物、していない物の2種を用意した。

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粘度測定・接触角測定

プラモデル用水性塗料の粘度測定にはアントンパール社の粘度計ViscoQC 300を、塗料のPS板への接触角測定では協和界面科学社の接触角計 DropMaster を使用しました。

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密着強度評価

Test Stamp Mを用いて、3N/secでサンプルへの荷重を増加させる条件で測定し、測定雰囲気温度は25℃としました。また、接着面積は約78mm²(Φ10mm)です。

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密着強度評価の検体作製

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測定結果

粘度測定および接触角測定の結果

濃度を調整したプラモデル用水性塗料の粘度と、塗料とPS板(表面処理あり・なし)の接触角測定についての結果は下記のとおりです。

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密着強度測定

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表面処理なしの場合、密着強度と粘度・接触角に相関があるように思われます。しかし、表面処理有りの物では密着強度と粘度・接触角に相関がなく、あまり変化が見られないことがわかりました。

 

剥離面の観察

密着強度測定後のアダプター・PS板表面をマイクロスコープで観察したところ、表面処理の有無で以下のような違いが見られました。

 

【表面処理なし】

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塗膜とPS板の界面近傍で剥離している

 

【表面処理あり】

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塗膜の内部で破断している

考察

表面処理無しのPS板では、密着強度はプラモデル用水性塗料濃度が濃いほど高くなり、接触角・粘度と相関が見られました。また、剥離箇所は塗料とPS板の界面近傍と考えられます。

一方で、表面処理有りの場合では密着強度は塗料濃度によらず、ほとんど差がみられませんでした。その剥離箇所も塗料の層内破壊となったと考えられます。

また、表面処理の有無で検討すると、表面処理ありのほうが約2倍の密着強度となりました。

 

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