【第八回】 希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点について

現在、「分散性」および「分散安定性」に対して一般的に行なわれている直接評価法は、液中の粒子径分布を測定することである(下記図参照)。

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そのため、スラリーやペースト等のいわゆる濃厚分散系の品質を管理する際には、レオロジー特性評価が従来、習慣的に行われ、粒子径分布の結果と関連づけて分散性を評価したり、相関性を調べられる方が多かった。

 

しかし、レオロジー特性はそのままの状態で評価するのに対し、粒子径分布は希釈してから測定されることが多い。

その理由は、粒子径分布評価法として、1)レーザー散乱回折法や2)動的光散乱法(DLS)が日本では最も一般的で、濃厚系のまま測定できる手法をご存じない方が多かったからである、と個人的には思っている。

 

ここで冒頭の「希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点」について考えてみよう。弊社で経験した濃厚系評価の適用例を振り返ってみると、以下のようなことが共通しているようだ。

 

1)溶媒中に分散剤や増粘剤が添加されており、その吸着量や状態を変化させないままの状態で測定する必要がある場合。

 この場合、水や溶媒で希釈すると吸着平衡がずれて元の界面状態が維持できなくなり、その結果、粒子径分布も変化する。

希釈しなければ、界面状態もそのまま維持させて評価が可能。

 

2)スラリーのレオロジー特性と粒子径分布の関係を調査したい場合。

 溶媒で薄めると粘性は大きく変化するので、もはや全く違う系になり測定する意味がなくなる。逆に濃厚系で粒子径分布が測定できることで、これまで分散していると信じていた条件でも凝集粒子が存在することが分かった。

 

3)最終製品や中間製品としてのスラリーの品質を管理する場合。

 一般的にはレオロジー特性と粒子径分布を関連づけて解釈をする場合が多いが、製品としては特性に差が見られているにも関わらず、希釈して粒子径を測定すると差がない場合が多い(上記2)と同様希釈により凝集状態から分散状態に変化したことが原因)。

 

4)湿式粉砕や混連機で処理をした直後の状態を数値化し、最適処理条件をすばやく見出したい。

 

5)スラリーを塗布する場合、調製した時点からある程度、時間が経過しているので、塗布直前の状態を把握したい、あるいは調製後の分散状態の経時変化を数値化したい場合。

 この場合、レオロジー特性と分散性の両方を同時に把握したいという要望が強いが、希釈すると系中に存在していた凝集状態が変化して粒子径との相関が失われる場合が多い。

 

 以上のような状況から、濃厚系での評価の必要性が求められている。

これまで慣れ親しんできたレーザー光を用いた手法は簡便である反面、ソルベント・ショックなど、スラリー分散液の状態把握においては課題が残されているので、

是非、濃厚系のまま適用可能な「超音波スペクトロスコピー」や「パルスNMR法」を一度試してみられることをお勧めする。