コラム分散・凝集AtoZ


弊社提携先の武田コロイドテクノ・コンサルティング式会社 武田 真一様にお願いして、多くのに分散・凝集に関する知見を拡げて頂きたく「分散・凝集 AtoZ」と題したコラムを開設させて頂く事になりました。月に1回程度投稿していく予定です。何か皆様のお仕事のヒントになれば幸いです。メール配信も行っておりますので、最新版をリアルタイムで読まれたい方はご依頼頂ければと思います。

武田 真一氏 プロフィール

昭和63年より超音波方式ゼータ電位測定装置の研究に従事平成4年より米国Dispersion Technology社との共同研究として超音波方式粒度分布測定装置の開発に従事

平成16年からは超音波法粒度分布測定法のISO化を目指し、ISO/TC24「超微粒子評価分野の国際規格適正化調査研究小委員会」委員および(WG2、141617)国際委員として活動またコロイド科学全般に関しては日本化学会「コロイドおよび界面化学部会事業企画」委員として活動中。

開設にあたって

近年、多くの先端材料、例えば電子材料、液晶、有機EL、太陽電池、燃料電池、二次電池等や、化粧品、医薬品、機能食品など広い範囲の応用分野を対象に粒子を液中に分散させた状態が作られ、製品化するために利用されています。

コロイド科学の分野ではこのような状態を一般化して、液中に分散している相が固相、液相、気相の場合に分類し、それぞれ分散粒子が固体のときにはサスペンション・スラリー、液体のときには乳化・エマルション、気体のときには泡と呼んでいます。

このコラムでは、この「分散・凝集」にまつわる色々な疑問点や昔話、最先端の話題などオムニバス形式で紹介していこうと思っております。サスペンション、エマルション、泡などについて色々疑問をお持ちの初心者の方から粒子表面の親・疎水性評価、溶媒への親和性評価など先端的研究に従事されておられる方まで、色々な方々に気楽にお読み頂けるような内容を目指しますのでこのコラムにお寄り頂ければ幸いです。


コラム 『バイオ医薬品 AtoZ』

【第八回】 希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点について

2016/08/30 6:32 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第八回 希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点について

現在、「分散性」および「分散安定性」に対して一般的に行なわれている直接評価法は、

液中の粒子径分布を測定することである(下記図参照)。

そのため、スラリーやペースト等のいわゆる濃厚分散系の品質を管理する際には、

レオロジー特性評価が従来、習慣的に行われ、粒子径分布の結果と関連づけて分散性を評価したり、相関性を調べられる方が多かった。


しかし、レオロジー特性はそのままの状態で評価するのに対し、粒子径分布は希釈してから測定されることが多い。

その理由は、粒子径分布評価法として、1)レーザー散乱回折法や2)動的光散乱法(DLS)が日本では最も一般的で、濃厚系のまま測定できる手法をご存じない方が多かったからである、と個人的には思っている。


ここで冒頭の「希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点」について考えてみよう。弊社で経験した濃厚系評価の適用例を振り返ってみると、以下のようなことが共通しているようだ。


1)溶媒中に分散剤や増粘剤が添加されており、その吸着量や状態を変化させないままの状態で測定する必要がある場合。

 この場合、水や溶媒で希釈すると吸着平衡がずれて元の界面状態が維持できなくなり、その結果、粒子径分布も変化する。

希釈しなければ、界面状態もそのまま維持させて評価が可能。


2)スラリーのレオロジー特性と粒子径分布の関係を調査したい場合。

 溶媒で薄めると粘性は大きく変化するので、もはや全く違う系になり測定する意味がなくなる。逆に濃厚系で粒子径分布が測定できることで、これまで分散していると信じていた条件でも凝集粒子が存在することが分かった。


3)最終製品や中間製品としてのスラリーの品質を管理する場合。

 一般的にはレオロジー特性と粒子径分布を関連づけて解釈をする場合が多いが、製品としては特性に差が見られているにも関わらず、希釈して粒子径を測定すると差がない場合が多い(上記2)と同様希釈により凝集状態から分散状態に変化したことが原因)。


4)湿式粉砕や混連機で処理をした直後の状態を数値化し、最適処理条件をすばやく見出したい。


5)スラリーを塗布する場合、調製した時点からある程度、時間が経過しているので、塗布直前の状態を把握したい、あるいは調製後の分散状態の経時変化を数値化したい場合。

 この場合、レオロジー特性と分散性の両方を同時に把握したいという要望が強いが、希釈すると系中に存在していた凝集状態が変化して粒子径との相関が失われる場合が多い。


 以上のような状況から、濃厚系での評価の必要性が求められている。

これまで慣れ親しんできたレーザー光を用いた手法は簡便である反面、ソルベント・ショックなど、スラリー分散液の状態把握においては課題が残されているので、

是非、濃厚系のまま適用可能な「超音波スペクトロスコピー」や「パルスNMR法」を一度試してみられることをお勧めする。





【第七回】 ゼータ電位の測り方-レーザー・ドップラー方式電気泳動法-

2016/05/08 21:57 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:07 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第七回 ゼータ電位の測り方-レーザー・ドップラー方式電気泳動法-

分散安定性」の支配因子のひとつに静電的斥力があり、

DLVO理論をもとにゼータ電位の値から安定性を推測することができる。

その意味から、ゼータ電位測定は分散安定性の間接的評価法として位置づけられている。


「分散」と言うと「ゼータ電位を評価すれば良い」という判断をされる方が多いのだが、

実際には、ゼータ電位以外にも「分散安定性」を評価する方法がある(本コラムその1

参照)ので注意して頂きたい。


最も普及しているゼータ電位測定法は電気泳動法で、

その中でも、レーザー・ドップラー方式電気泳動法が最も良く用いられているので、

今回はこの手法についてもう少し詳しく紹介しよう。

この手法は、電場下にある粒子の散乱光を測定し、

そのドップラー周波数シフトから電気泳動移動度を算出するもので、

正式には「電気泳動光散乱法(ELS: Electrophoretic Light Scattering)」

と呼ばれている。

一般に、「ドップラー効果」とは、光や音波が運動している物体に当たり反射あるいは

散乱すると、散乱光の振動数が物体の速度に比例して変化するという効果であるが、

懸濁液に電場を印加すると粒子が泳動し、その泳動速度から電気泳動移動度が評価され、

ゼータ電位に変換される。


電場下の液中に分散した粒子に位相の揃った光を入射すると、電荷を持った粒子は、

その電荷の符号に応じて陽極または陰極のいずれか方向に移動する。

また、この粒子の移動速度は電荷量に依存するので粒子からの散乱光周波数のシフト量も

同様に変化する。

したがって、シフトした周波数分布から、粒子の電気泳動移動度の分布が決められる。


ELS法は、較正用標準粒子を必要とせず、水系または非水系いずれかの媒体中に懸濁した

サンプル粒子の電気泳動を迅速にしかも自動的に高い再現性で測定することができる

利点を有している。

そのため、現在、多くのメーカーから装置が販売されている。

ただし、注意点として、粒子1個が識別できる、あるいは懸濁液サンプルを光が透過する

という条件を満たしている場合しか測定することができないので、

粒子濃度が高いサンプルの場合には希釈して測定に供する必要がある。


サンプルを希釈する際に系のイオン濃度などが変わってしまうと、ゼータ電位にも大きな

影響を与えてしまい、実際のサンプルとは異なる測定結果が得られてしまうので

(下図参照:溶媒で希釈すると粒子濃度と共にイオン濃度も下がるので、電気二重層

厚さ[1/κ]が大きくなるのでゼータ電位の値が変わるだけでなく、κaの値も変化する)

注意深くサンプル調製を行なう必要がある。

希釈方法としては、懸濁液を遠心分離し、その上澄み液を用いて希釈することをお勧めする。


*電気泳動移動度:電場強度あたりの電気泳動速度。単位はm2/[Vs]

 ちなみに、電気泳動速度は、電気泳動中の粒子速度で単位はm/s






【第六回】 分散安定性とゼータ電位

2016/03/31 21:07 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第六回 分散安定性とゼータ電位

「分散安定性」の定義は、「分散状態が時間の経過とともに変化しないこと、あるいは変化に対する抵抗が大きい様子」とされている(ISO TR-13097)。

さらに、「分散安定性」の支配因子のひとつに、DLVO理論の中の静電的斥力がある。

この斥力は、粒子同士が近づき粒子間距離が短くなると(拡散)電気二重層が重なり、重畳部分は溶液バルク相のイオン濃度よりも対(たい)イオン濃度が高くなり過剰浸透圧が働き、これが静電的斥力の源となっている。

今回は、この斥力の見積もり方を紹介しよう。



まず、このコラムの第三回で紹介した粒子間ポテンシャル曲線の復習から始める。

上図のポテンシャル曲線の中で電気二重層斥力をご覧頂きたい。

この力は、粒子表面から少し離れた位置(引力が働く距離よりも少し遠い位置で働くときに威力を発揮する)で働くのであるが、この表面からの隔たりが電気二重層厚さ(通常、1/κで表す)に関係し、この斥力ポテンシャルの高さがゼータ電位に関係する。

したがって、一般的にはゼータ電位を測定してその値を評価することが、取りも直さず、斥力の強さを評価しているとして「ゼータ電位の大きさ=分散安定性」として理解されている。


コラムの第四回でも述べたように、斥力の源は高分子による立体障害効果もあるので、ゼータ電位だけが分散安定性の指標とは断定できないのであるが、Schulze-Hardy(シュルツ・ハーディ)の法則に見られるように、電位の値から分散安定性を論理的にきちんと説明できるので、とくに研究者に好まれて使われている。

(現場のプロセスに携わっておられる方の中には、ゼータ電位の傾向と目のあたりにする分散現象の間に不一致があることからゼータ電位を指標として用いることに抵抗を感じる方も多くおられる)


ゼータ電位は、25mV1kTに相当するので、一般的には、この「25mV」以上あるときに分散性が良いと判断されている。(この根拠については、今後、このコラムで取り上げる)


ゼータ電位の測定法は種々あり、測定装置も複数社から市販されているので、現在では容易にゼータ電位を求めることができ、斥力ポテンシャルの大きさの程度を知ることができる。

最も普及しているゼータ電位測定法は、レーザー・ドップラー方式電気泳動法で、光を透過する程度に希釈した懸濁液中の粒子の電気泳動移動度を自動で測定して、附属のソフトでゼータ電位に換算してくれる優れものである。

ただし、希釈操作は原液のイオン濃度を下げてしまうので、できるだけ変化を与えないようにするために遠心分離などで上澄み液を作り、その液で希釈するとよい。


あまり普及していないが、原液の濃厚系のままゼータ電位が測定できる「超音波法」や「ESA法」による装置も市販されているので、そのままで測定されたい場合には、これら方法をお勧めする。


ゼータ電位法の詳細やゼータ電位活用法など、まだまだ紹介したい事柄もあるので、しばらくはゼータ電位関連の話題を今後提供させて頂くことにする。




【第五回】 分散性に及ぼす粒子表面の水分子の存在

2016/01/17 6:06 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第五回 分散性に及ぼす粒子表面の水分子の存在

前々回、「分散性」と「凝集力」について粒子間ポテンシャルを基に説明した。

その中で、「分散性」のパラメータは粒子-溶媒間の界面エネルギーや濡れ性であり、粒子同士の「凝集力」と表裏一体の関係にある。と述べたが、今回は、この界面エネルギーや濡れ性を科学的に捉える前に留意すべき「水の影響」に関する共通の認識を紹介しよう。


凝集力(London-van der Waals力)が概ね10nm以下の距離で働くので、以下のお話は粒子表面から10nm以内の距離にある領域に関係する。

一般に粒子が空気中に存在するときは、たとえ乾粉であろうとも表面には少なからず水分子が吸着している。

とくに表面に水酸基などが存在すると水素結合により水分子は一層強く相互作用している。

この水分子の存在は、粉体原料を扱う上で非常に厄介な問題を引き起こす場合がある。

例えば、以下のようなことを経験されたことはおありだろうか?


・製品に季節変動がある、 

・晴れの日と雨の日で製品の品質が異なる

・粉体原料の製造後の経過時間によって、できた製品の品質が異なる

・使用している有機溶媒との馴染みが日々異なる

・調製したスラリーの寿命がロットによって異なる(ロットによっては粘度がすぐに高くなる)

・調製したスラリーがゲル化してしまうことがある(粘性が大きく異なる)

・原料の仕入れ先を変えると、歩留まりが下がった


もし、扱われている粉体原料で上記のうち二つ以上の経験をされておられると、その場合、表面の水分子が関係していると判断してまずは間違いない。


例えば、有機溶媒に粉を分散させるときに、水分子が表面に吸着していると、この水分子は吸着したままで溶媒の有機分子と置き換われないことがある。

その場合に、粉表面は有機溶媒への親和性が低いので、粉表面にある水分子同士が集まってくる。すなわち水分子を介して粒子が凝集することになる。

したがって、表面水酸基の単位面積当たりの密度が異なる場合には、吸着している水分子の数や強さが異なるので凝集の程度も自ずと異なってしまう。

有機溶媒の極性の程度を考慮して適切な溶媒を分散媒として選んだつもりでも、実際には有機溶媒分子と直接、接しているのではなく、界面に水分子が存在して、界面状態を大きく変えてしまっている場合があるので注意して頂きたい。


*水素結合:分子間力は、分子同士や高分子内の離れた部分の間に働く電磁気学的な力で、

力の強い順に並べると、イオン間相互作用>水素結合>双極子相互作用>ファンデルワールス力、とされている。

したがって、水分子が粒子表面に水素結合で吸着している場合には、この力よりも強いイオン間相互作用を使わないと、水分子と置換されない。

すなわち溶媒との親和性は低いままで分散が進まない状況が現れる。

アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤が良く使われる理由は、このイオン間相互作用が効力を発揮して、水分子の悪影響を簡単に取り除いてくれるからである。


ちなみに、上記の四つの力はいずれも静電気的相互作用に基づく引力である。

イオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用は永続的な+と-との電気双極子により生じるが、ファンデルワールス力は電荷の誘導や量子力学的な揺らぎによって生じた一時的な電気双極子により生じる。

永続的な電荷により引き起こされる引力や斥力は古典的なクーロンの法則で示されるように距離の逆二乗と電荷の量により決定づけられる。

3者の相互作用の違いはおもに関与する電荷量の違いであり、イオン間相互作用は、整数量の電荷が関与するため最も強い。水素結合は電荷の一部だけが関与するため、1桁弱い。

双極子相互作用はさらに小さな電荷によるため、さらに1桁弱くなる。





【第四回】 「分散安定性」の制御について-粒子間に働く斥力と粒子間距離

2015/12/02 18:14 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第四回 「分散安定性」の制御について-粒子間に働く斥力と粒子間距離

前回は「分散性」と「凝集力」について紹介した。

今回は、「分散安定性」の制御について考えてみよう。


「分散安定性」の鍵を握るのは、DLVO理論の中の静電的斥力や粒子表面に吸着した高分子である。前者の静電的斥力は、粒子同士が近づき粒子間距離が短くなると(拡散)電気二重層が重なり、重畳部分は溶液バルク相のイオン濃度よりも対(たい)イオン濃度が高くなり過剰浸透圧が働く。この過剰浸透圧が静電的斥力の源となる。


一方、後者の高分子吸着による分散安定化機構は、二つあって、

① 吸着高分子の鎖同士が重なり合うと、重なり合っていない部分に比べて高分子鎖濃度が高くなるので、浸透圧によって周りから溶媒が流入して粒子間に斥力が働く、という浸透圧効果と、

② 鎖が接近することにより一つの鎖の自由体積内には他の鎖が入れず、広がった鎖が圧縮されてしまい、鎖が元の状態に戻ろうとして粒子間に斥力が働く、という立体障害効果がある。


いずれにしても粒子間距離に依存してこれら斥力が作用する領域が決まるので、ここでは粒子間距離の計算の仕方について少し触れておくことにする。

ここで断わっておくが、前回の凝集力と大きく異なるのは、凝集力(London-van der Waals力)が概ね10nm以下の距離で働くのに対し、斥力は10nm以上の比較的遠い距離で働く点である。


 まず、前回のコラムで粒子間相互作用のポテンシャル曲線を示したが、粒子間距離に依存して変化していたことを思い出して頂きたい。横軸の粒子間距離は実は粒子の濃度だけではなく、粒子の大きさにも依存して決まる。この点が重要である。

つまり、粒子濃度が同じ20vol%であっても500nmの粒子の場合と20nmの粒子の場合では大きく異なる。

東京農工大の神谷先生らのグループがWoodcockの式を用いて計算した例があるので下図に示す。


この図からも明らかなように、500nmの粒子の場合には粒子の表面間距離は約100nmであるのに対し、20nmの粒子の場合には約4nmとなっている。

したがって、濃厚分散液を扱う場合には、粒子径と濃度から粒子間距離を計算し、おおよその状況を想像しながら分散安定性の制御因子を考察する必要がある。

例えば、静電的斥力で分散安定性を制御しようとするとき、電気二重層の厚さは、z-z型電解質溶液の場合、z=1KCl,NaCl,KNO3など)で



となるので、20nmの粒子の場合、20vol%では粒子表面間距離が約4nmなので、0.1mol/Lの電解質濃度であれば二重層は重ならないが、0.001mol/Lになると二重層がはじめから重なってしまう計算になるので、実際にこの濃度で調製すると凝集粒子ができることになる。



粒子径が570nmから43nmまでの3種の粒子径の系で濃厚アルミナスラリーを調製して超音波法で粒子径分布を求めた東工大・磯部先生と産総研・堀田先生らのグループの結果を示すが、いずれも粒子間距離が10nm程度に近づく濃度になると、全ての粒子がもはや1次粒子として存在できなくなり、凝集粒子が含まれてくることが実験結果からも確認されている。

この系では、電解質の代わりにポリアクリル酸アンモニウムの高分子が分散剤として用いられているので、電解質濃度から計算される二重層厚さをそのままあてはめて解釈することはできないが、

少なくとも粒子間距離が短くなってくると、電気二重層だけでなく、高分子吸着層同士の相互作用が作用する距離になり、ある程度凝集粒子が残り、粒子間の距離が短いために分散安定性を制御するのが難しくなってくることが分かる。

今回は粒子間距離や電気二重層の厚さの詳細な計算方法等を省いたが、このコラムでは順次それら計算法等も紹介してゆこうと思う。




【第三回】 粒子間に働く凝集力とそれを表すポテンシャル曲線の関係について

2015/10/20 2:21 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第三回 粒子間に働く凝集力とそれを表すポテンシャル曲線の関係について

スラリーなどの微粒子濃厚分散系を実際に扱っておられる方々の最大の関心事は、分散・凝集状態を如何に制御するか、すなわち、製品の品質や生産性の向上につながる分散・凝集状態の把握と再現性高くその状態に調製する手法の確立である。

なぜなら、前回示したような凝集粒子や粒子集合体を完全になくして一個一個の微粒子に分散させれば、必ず良い製品になるとは限らないからである。

そこで今回は、1回目に説明した「分散性」の制御について考えてみたい。

(「分散安定性」の制御については第四回で説明する予定である)


「分散性」のパラメータは粒子-溶媒間の界面エネルギーや濡れ性であり、粒子同士の 「凝集力」と表裏一体の関係にある。

粒子間の凝集力は、DLVO理論の中では主に分子間力(London-van der Waals力 )で説明されることが多いので、まずはポテンシャル曲線を用いて分子間力を説明してみよう。


凝集力に関係するのは、上図で負のポテンシャル領域で示している部分である。

したがって、負の絶対値が小さいほど、すなわちゼロに近いほど凝集力が弱く、より弱い力で解こうすることができる。


次にLondon-van der Waals力のポテンシャル曲線と電気二重層に由来する静電的斥力のそれの総和曲線が全相互作用と記した曲線である。

粒子間距離の近い位置でprimary min.(1次極小)があり、少し距離が遠くなった位置でsecondary min.2次極小)がある。

負の絶対値が大きいprimary min.はより凝集力が強く、凝集粒子を描いた次の図中、粒子同士が直接接触した場合に対応する。

一方、secondary min.ではポテンシャル曲線の位置もゼロに近くなり、凝集力が弱いことを示している。

凝集状態も粒子間に若干距離があり、粒子間に分散媒の水分子や分散剤などの高分子が存在していることを示唆している。

したがって、実際のモノ作りではsecondary min.を如何に調製するかが鍵となってくるものと思われる。


次回は、「分散安定性」の制御について紹介します。


DLVO理論・・・コロイド粒子の分散・凝集現象を、粒子間の電気二重層に由来する浸透圧斥力とLondon-van der Waals力の総和である粒子間引力のバランスによって予測できると説明した理論。




【第二回】「Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて

2015/09/27 18:57 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

第二回Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて


前回は「分散性」と「分散安定性」の違いについて説明した。そのなかで、「分散性」のパラメータは粒子-溶媒間界面エネルギーや濡れ性であり、粒子同士の「凝集力」と表裏一体の関係にあると述べた。


粒子間の付着や凝集力は分子間力(London-van der Waals力 )や水分の吸着(親水性)が鍵を握っているのだが、一般に粒子間に働く力の大きさや形態で凝集状態が分類されている。

すなわち、強凝集体=aggregate弱凝集体=agglomerate軟粒子集合体=flocculateである(上図参照)。

全ての応用分野で成立するような凝集状態の定義はないので、ここでは各状態のおおよその違いについて述べる。

(a)(b)1次粒子同志が直接結合して塊になっており、結合の仕方や強さの違いで分類されている。また、これらの凝集体は分散媒がなくても存在しうる。

一方、(c)は分散媒を介して形成され、この集合体が攪拌等により破壊されても攪拌をやめて静置すると再び元の状態に戻る。

したがって、前者は不可逆的で後者は可逆的であると言える。


濃厚分散系になると、これら凝集体がさらに粒子集合体を形成して、agglomerate-flocculate集合体、flocculate-flocculate集合体、aggregate-flocculate集合体などを形成する(下図参照)。



もちろん、液中にバインダーや分散剤として高分子が含まれると、それらが粒子間を架橋するなどさらに複雑な構造や状態を形成するのに寄与する。

こうしてみると、濃厚分散系では、もはや凝集体や粒子集合体の大きさを評価するだけでは不十分で、微構造を評価する必要があるようだ。


 次回は、粒子間に働く凝集力とそれを表すポテンシャル曲線の関係について紹介します。





【第一回】分散性・分散安定性・凝集状態の意味するところ

2015/07/14 20:50 に 武田真一 が投稿   [ 2016/09/29 1:10 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]

【第一回】分散性・分散安定性・凝集状態の意味するところ


「分散性」とは微粒子化のし易さ、液中で凝集している粒子のほぐし易さ(し易いことをどんな物理量で表すかが難しいが・・・)を指すことが一般的である。しかし、実際には、「分散性」の言葉の中に「分散安定性」も含めてしまい、とくに区別せずに使われる場合もある。ISOTR(Technical Report)-13097では、この「分散安定性」を定義しているので紹介しよう

分散安定性とは「分散状態が時間の経過とともに変化しないこと、あるいは変化に対する抵抗が大きい様子」と定義されている。ここで言う変化とは、凝集や合一だけでなく、沈降や浮上(クリーミング)、オストワルドライプニングなども含んでいる。

したがって、ゼータ電位だけが分散安定性のパラメータではなく、沈降や浮上に対してはストークスの式(後日、取り上げる予定です)の中に含まれる粒子密度、粒子径、溶媒密度、溶媒粘度などもパラメータとして考慮すべきなのである。

ちなみに、「分散性」のパラメータは粒子-溶媒間界面エネルギー、濡れ性であるが、裏を返せば「凝集力」のパラメータとも共通している。粒子間の付着、凝集力は分子間力(London-van der Waals力 )や表面の吸着水分その他の介在物の存在、帯電、磁性などが主要な原因と考えられているので、分子間力や水分の吸着(親水性)が「分散性」の鍵を握っていることになる。

こうして考えてみると、「分散性」と「分散安定性」の駆動力は大きく異なるので、製造現場で遭遇する問題を解決する場合にも、いずれの特性が関係しているのかを見極めることこそが、解決の糸口といえるのではないだろうか。

 次回は、凝集状態として良く使われる「Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて紹介します。




コラム【分散・凝集 AtoZ】

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