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コラム【分散・凝集 AtoZ】
【第八回】 希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点について
2016/08/30 6:32 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第八回】 希釈せずに濃厚系のまま評価することの利点について
現在、「分散性」および「分散安定性」に対して一般的に行なわれている直接評価法は、 液中の粒子径分布を測定することである(下記図参照)。 ![]()
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【第七回】 ゼータ電位の測り方-レーザー・ドップラー方式電気泳動法-
2016/05/08 21:57 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:07 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第七回】 ゼータ電位の測り方-レーザー・ドップラー方式電気泳動法-
「分散安定性」の支配因子のひとつに静電的斥力があり、 DLVO理論をもとにゼータ電位の値から安定性を推測することができる。 その意味から、ゼータ電位測定は分散安定性の間接的評価法として位置づけられている。 「分散」と言うと「ゼータ電位を評価すれば良い」という判断をされる方が多いのだが、 実際には、ゼータ電位以外にも「分散安定性」を評価する方法がある(本コラム【その1】 参照)ので注意して頂きたい。 最も普及しているゼータ電位測定法は電気泳動法で、 その中でも、レーザー・ドップラー方式電気泳動法が最も良く用いられているので、 今回はこの手法についてもう少し詳しく紹介しよう。 この手法は、電場下にある粒子の散乱光を測定し、 そのドップラー周波数シフトから電気泳動移動度を算出するもので、 正式には「電気泳動光散乱法(ELS: Electrophoretic Light Scattering)」 と呼ばれている。 一般に、「ドップラー効果」とは、光や音波が運動している物体に当たり反射あるいは 散乱すると、散乱光の振動数が物体の速度に比例して変化するという効果であるが、 懸濁液に電場を印加すると粒子が泳動し、その泳動速度から電気泳動移動度*が評価され、 ゼータ電位に変換される。 電場下の液中に分散した粒子に位相の揃った光を入射すると、電荷を持った粒子は、 その電荷の符号に応じて陽極または陰極のいずれか方向に移動する。 また、この粒子の移動速度は電荷量に依存するので粒子からの散乱光周波数のシフト量も 同様に変化する。 したがって、シフトした周波数分布から、粒子の電気泳動移動度の分布が決められる。 ELS法は、較正用標準粒子を必要とせず、水系または非水系いずれかの媒体中に懸濁した サンプル粒子の電気泳動を迅速にしかも自動的に高い再現性で測定することができる 利点を有している。 そのため、現在、多くのメーカーから装置が販売されている。 ただし、注意点として、粒子1個が識別できる、あるいは懸濁液サンプルを光が透過する という条件を満たしている場合しか測定することができないので、 粒子濃度が高いサンプルの場合には希釈して測定に供する必要がある。 サンプルを希釈する際に系のイオン濃度などが変わってしまうと、ゼータ電位にも大きな 影響を与えてしまい、実際のサンプルとは異なる測定結果が得られてしまうので (下図参照:溶媒で希釈すると粒子濃度と共にイオン濃度も下がるので、電気二重層 厚さ[1/κ]が大きくなるのでゼータ電位の値が変わるだけでなく、κaの値も変化する) 、注意深くサンプル調製を行なう必要がある。 希釈方法としては、懸濁液を遠心分離し、その上澄み液を用いて希釈することをお勧めする。 *電気泳動移動度:電場強度あたりの電気泳動速度。単位はm2/[V・s] ちなみに、電気泳動速度は、電気泳動中の粒子速度で単位はm/s。 ![]() | 微粒子・ナノ粒子 |
【第六回】 分散安定性とゼータ電位
2016/03/31 21:07 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第六回】 分散安定性とゼータ電位
「分散安定性」の定義は、「分散状態が時間の経過とともに変化しないこと、あるいは変化に対する抵抗が大きい様子」とされている(ISO TR-13097)。 さらに、「分散安定性」の支配因子のひとつに、DLVO理論の中の静電的斥力がある。 この斥力は、粒子同士が近づき粒子間距離が短くなると(拡散)電気二重層が重なり、重畳部分は溶液バルク相のイオン濃度よりも対(たい)イオン濃度が高くなり過剰浸透圧が働き、これが静電的斥力の源となっている。 今回は、この斥力の見積もり方を紹介しよう。 まず、このコラムの【第三回】で紹介した粒子間ポテンシャル曲線の復習から始める。 上図のポテンシャル曲線の中で電気二重層斥力をご覧頂きたい。 この力は、粒子表面から少し離れた位置(引力が働く距離よりも少し遠い位置で働くときに威力を発揮する)で働くのであるが、この表面からの隔たりが電気二重層厚さ(通常、1/κで表す)に関係し、この斥力ポテンシャルの高さがゼータ電位に関係する。 したがって、一般的にはゼータ電位を測定してその値を評価することが、取りも直さず、斥力の強さを評価しているとして「ゼータ電位の大きさ=分散安定性」として理解されている。 コラムの【第四回】でも述べたように、斥力の源は高分子による立体障害効果もあるので、ゼータ電位だけが分散安定性の指標とは断定できないのであるが、Schulze-Hardy(シュルツ・ハーディ)の法則に見られるように、電位の値から分散安定性を論理的にきちんと説明できるので、とくに研究者に好まれて使われている。 (現場のプロセスに携わっておられる方の中には、ゼータ電位の傾向と目のあたりにする分散現象の間に不一致があることからゼータ電位を指標として用いることに抵抗を感じる方も多くおられる) ゼータ電位は、25mVが1kTに相当するので、一般的には、この「25mV」以上あるときに分散性が良いと判断されている。(この根拠については、今後、このコラムで取り上げる) ゼータ電位の測定法は種々あり、測定装置も複数社から市販されているので、現在では容易にゼータ電位を求めることができ、斥力ポテンシャルの大きさの程度を知ることができる。 最も普及しているゼータ電位測定法は、レーザー・ドップラー方式電気泳動法で、光を透過する程度に希釈した懸濁液中の粒子の電気泳動移動度を自動で測定して、附属のソフトでゼータ電位に換算してくれる優れものである。 ただし、希釈操作は原液のイオン濃度を下げてしまうので、できるだけ変化を与えないようにするために遠心分離などで上澄み液を作り、その液で希釈するとよい。 あまり普及していないが、原液の濃厚系のままゼータ電位が測定できる「超音波法」や「ESA法」による装置も市販されているので、そのままで測定されたい場合には、これら方法をお勧めする。 ゼータ電位法の詳細やゼータ電位活用法など、まだまだ紹介したい事柄もあるので、しばらくはゼータ電位関連の話題を今後提供させて頂くことにする。 | 微粒子・ナノ粒子 |
【第五回】 分散性に及ぼす粒子表面の水分子の存在
2016/01/17 6:06 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:08 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第五回】 分散性に及ぼす粒子表面の水分子の存在
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【第四回】 「分散安定性」の制御について-粒子間に働く斥力と粒子間距離
2015/12/02 18:14 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第四回】 「分散安定性」の制御について-粒子間に働く斥力と粒子間距離
前回は「分散性」と「凝集力」について紹介した。 今回は、「分散安定性」の制御について考えてみよう。 「分散安定性」の鍵を握るのは、DLVO理論の中の静電的斥力や粒子表面に吸着した高分子である。前者の静電的斥力は、粒子同士が近づき粒子間距離が短くなると(拡散)電気二重層が重なり、重畳部分は溶液バルク相のイオン濃度よりも対(たい)イオン濃度が高くなり過剰浸透圧が働く。この過剰浸透圧が静電的斥力の源となる。 一方、後者の高分子吸着による分散安定化機構は、二つあって、 ① 吸着高分子の鎖同士が重なり合うと、重なり合っていない部分に比べて高分子鎖濃度が高くなるので、浸透圧によって周りから溶媒が流入して粒子間に斥力が働く、という浸透圧効果と、 ② 鎖が接近することにより一つの鎖の自由体積内には他の鎖が入れず、広がった鎖が圧縮されてしまい、鎖が元の状態に戻ろうとして粒子間に斥力が働く、という立体障害効果がある。 いずれにしても粒子間距離に依存してこれら斥力が作用する領域が決まるので、ここでは粒子間距離の計算の仕方について少し触れておくことにする。 ここで断わっておくが、前回の凝集力と大きく異なるのは、凝集力(London-van der Waals力)が概ね10nm以下の距離で働くのに対し、斥力は10nm以上の比較的遠い距離で働く点である。 まず、前回のコラムで粒子間相互作用のポテンシャル曲線を示したが、粒子間距離に依存して変化していたことを思い出して頂きたい。横軸の粒子間距離は実は粒子の濃度だけではなく、粒子の大きさにも依存して決まる。この点が重要である。 つまり、粒子濃度が同じ20vol%であっても500nmの粒子の場合と20nmの粒子の場合では大きく異なる。
東京農工大の神谷先生らのグループがWoodcockの式を用いて計算した例があるので下図に示す。 ![]() この図からも明らかなように、500nmの粒子の場合には粒子の表面間距離は約100nmであるのに対し、20nmの粒子の場合には約4nmとなっている。 したがって、濃厚分散液を扱う場合には、粒子径と濃度から粒子間距離を計算し、おおよその状況を想像しながら分散安定性の制御因子を考察する必要がある。 例えば、静電的斥力で分散安定性を制御しようとするとき、電気二重層の厚さは、z-z型電解質溶液の場合、z=1(KCl,NaCl,KNO3など)で ![]() となるので、20nmの粒子の場合、20vol%では粒子表面間距離が約4nmなので、0.1mol/Lの電解質濃度であれば二重層は重ならないが、0.001mol/Lになると二重層がはじめから重なってしまう計算になるので、実際にこの濃度で調製すると凝集粒子ができることになる。 ![]() 粒子径が570nmから43nmまでの3種の粒子径の系で濃厚アルミナスラリーを調製して超音波法で粒子径分布を求めた東工大・磯部先生と産総研・堀田先生らのグループの結果を示すが、いずれも粒子間距離が10nm程度に近づく濃度になると、全ての粒子がもはや1次粒子として存在できなくなり、凝集粒子が含まれてくることが実験結果からも確認されている。 この系では、電解質の代わりにポリアクリル酸アンモニウムの高分子が分散剤として用いられているので、電解質濃度から計算される二重層厚さをそのままあてはめて解釈することはできないが、 少なくとも粒子間距離が短くなってくると、電気二重層だけでなく、高分子吸着層同士の相互作用が作用する距離になり、ある程度凝集粒子が残り、粒子間の距離が短いために分散安定性を制御するのが難しくなってくることが分かる。
今回は粒子間距離や電気二重層の厚さの詳細な計算方法等を省いたが、このコラムでは順次それら計算法等も紹介してゆこうと思う。 | 微粒子・ナノ粒子 |
【第三回】 粒子間に働く凝集力とそれを表すポテンシャル曲線の関係について
2015/10/20 2:21 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第三回】 粒子間に働く凝集力とそれを表すポテンシャル曲線の関係について
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【第二回】「Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて
2015/09/27 18:57 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:09 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
【第二回】「Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて
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【第一回】分散性・分散安定性・凝集状態の意味するところ
2015/07/14 20:50 に 武田真一 が投稿 [ 2016/09/29 1:10 に 宮嶋秀樹 さんが更新しました ]
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