【第一回】分散性・分散安定性・凝集状態の意味するところ

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「分散性」とは微粒子化のし易さ、液中で凝集している粒子のほぐし易さ(し易いことをどんな物理量で表すかが難しいが・・・)を指すことが一般的である。しかし、実際には、「分散性」の言葉の中に「分散安定性」も含めてしまい、とくに区別せずに使われる場合もある。ISOのTR(Technical Report)-13097では、この「分散安定性」を定義しているので紹介しよう。

 

分散安定性とは「分散状態が時間の経過とともに変化しないこと、あるいは変化に対する抵抗が大きい様子」と定義されている。ここで言う変化とは、凝集や合一だけでなく、沈降や浮上(クリーミング)、オストワルドライプニングなども含んでいる。

 

したがって、ゼータ電位だけが分散安定性のパラメータではなく、沈降や浮上に対してはストークスの式(後日、取り上げる予定です)の中に含まれる粒子密度、粒子径、溶媒密度、溶媒粘度などもパラメータとして考慮すべきなのである。

 

ちなみに、「分散性」のパラメータは粒子-溶媒間界面エネルギー、濡れ性であるが、裏を返せば「凝集力」のパラメータとも共通している。粒子間の付着、凝集力は分子間力(London-van der Waals力 )や表面の吸着水分その他の介在物の存在、帯電、磁性などが主要な原因と考えられているので、分子間力や水分の吸着(親水性)が「分散性」の鍵を握っていることになる。

 

こうして考えてみると、「分散性」と「分散安定性」の駆動力は大きく異なるので、製造現場で遭遇する問題を解決する場合にも、いずれの特性が関係しているのかを見極めることこそが、解決の糸口といえるのではないだろうか。

 

 次回は、凝集状態として良く使われる「Aggregation」と「Flocculation」の状態の違いについて紹介します。